今、私たち人間は言葉を使って話をしており、近年の情報技術によってコミュニケーションの範囲もその方法も急速に拡大しつつある。さらにはAI(人工知能)の進化によって、記憶や考える能力までも脳の外に出せるようになった。まさに、他者と身体ではなく、脳でつながる時代を迎えている。しかし、人類の700万年の進化史のなかで言葉をしゃべり始めたのはこの数万年にすぎない。それまで人間は身体を使って人間関係を操作し、信頼のきずなを形成してきたのである。それはどんなコミュニケーションで、どのような背景で生まれたのか。人間と系統的に近いゴリラのコミュニケーションを参考にしながらその謎に迫り、AIを駆使する未来の人間社会について考えてみたい。

○ 略歴
1952年東京生まれ、京都大学理学部卒、京都大学大学院理学研究科博士課程単位取得退学、理学博士。日本モンキーセンター研究員、京都大学霊長類研究所助手、京都大学大学院理学研究科助教授、同教授を経て、2014年から第26代京都大学総長。国際霊長類学会会長、日本霊長類学会会長、日本アフリカ学会理事を歴任、日本学術会議会員、環境省中央環境会議委員、国立大学協会会長。専門は人類学・霊長類学。屋久島のニホンザルやアフリカ各地のゴリラの野外研究を通して、人類の過去の社会性や家族の起源の解明を目指している。著書に『ゴリラ』(東京大学出版会)、『暴力はどこから来たか』(NHKブックス)、『家族進化論』(東京大学出版会)、『サル化する人間社会』(集英社)、『京大式おもろい勉強法』(朝日選書)、『ゴリラは戦わない』(共著、中公新書ラクレ)などがある。

皆さんもご存じのとおり、AI、deeplearningなどの情報技術が囲碁や将棋の世界に激震を与えています。しかし、これは、囲碁や将棋に留まるだけの話ではなく研究開発あり方にも大きな影響を与えるのは避けられません。実際、欧米の研究では、AIの流れに乗って、今まで判断に使わなかった情報を含めデータ処理をし、研究開発の効率性やあたらな視点を手に入れようとしています。一方、日本の研究開発は、欧米の研究開発に比べ職人的、つまり、属人的気質が強く、表面上の数値のみでの判断だけでなく、研究者の感性によって支えられており、そこからくる粘り強さが材料開発や製品すり合わせなどで、生かされており、欧米などのドライな数値判断を超える品質や性能を生み出してきました。このままでは、囲碁や将棋のように、日本型の職人的研究開発の方法は、AIに超克されてしまうのではないか?そういう不安に駆られます。 本講演では、日本型の研究開発と欧米型の研究開発の違いや研究開発におけるAIとの付き合い方を考察し、日本型の研究開発の新たなあり方を提言します。

1000兆ワットの超高強度を実現するJ-KARENレーザー装置を中心とした先端レーザー技術の開発とそれを基盤とした第5世代量子線がん治療装置(量子メス)の大幅な小型化を目指したレーザー加速研究、レーザーでコンクリート内部の欠陥を遠隔・非接触で素早く検知するレーザー打音技術、レーザーを用いた非侵襲血糖値センサーの開発や生体組織深部の観察も可能な新しいレーザー顕微鏡開発等の関西研で進めている最先端技術開発について紹介します。

島津製作所では、「人と地球の健康」への願いを実現する、という経営理念のもと事業活動を展開していますが、現代の社会問題の一つである深刻な土壌汚染への対策方法として、環境にやさしい原位置浄化手法である「電気発熱法」を開発し、現在その普及と拡大を図っています。将来的には非化石資源発電との融合によりグリーンサステイナブルな展開も期待されるこの技術について、適用事例を交えながら、わかりやすく紹介します。

NICTは宇宙天気予報を毎日配信しています。太陽が源となって起こる宇宙嵐は、しばしば我々社会にも影響を及ぼします。これを予見し対策するために、我々研究チームは機械学習と太陽画像30万枚を用いた太陽フレアの予報モデルを開発し、予報的中率を8割 まで上げることに成功しました。有人を含めた宇宙利用が進み、航空業界での利用義務化も検討される中、我々の宇宙天気予報の精度向上と実用化に向けた最先端の研究を紹介します。